大島学習塾のブログ

10で何回割り切れる?
2020年9月2日
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さて、ある日の授業での一コマ…
次の問題にであいました:
問題1【2015年愛光高校 第1問(4)】
$1\times 2\times 3\times \cdots \times 30$ は $2$ で最大 $\boxed{\,\,\,①\,\,\,}$ 回わりきることができ,$10$ で最大 $\boxed{\,\,\,②\,\,\,}$ 回わりきることができる。

この問題は旺文社の『全国高校入試問題正解』では「難」という評価でした。でも、あとで紹介する問題2も含めて、結構いろいろなところで同様の問題を見かけます。

まずは、問題の解説を行いたいと思います。
…とその前に、問題1に登場する
$$1\times 2\times 3\times \cdots \times 30$$ という数ですが、毎回これを書くのは大変なので、記号を導入します。$1$ から $30$ までの自然数の積のこと $30$ の階乗(かいじょう)と呼び、 $30!$ で表します(高校で習います)。
同様に、自然数 $n$ に対し、$n$ の階乗を、
$$n!=1\times 2\times 3\times \cdots \times n$$ で定義します。
階乗の記号を使うと、この問題の前半は、$30!$ は $2$ で最大何回割り切れるか?とシンプルに表現できます^^★
$2$ で割り切れる回数は、素因数分解したときの素因数 $2$ の個数に対応します。$1$ から $30$ までの数の中に $2$ の倍数(偶数)は15個あり、それぞれの偶数は素因数 $2$ を少なくとも1つもつので、$30!$ は $2$ で15回は割り切ることができます。素因数 $2$ はこれだけではありません。$4=2^2$ の倍数は素因数 $2$ を少なくとも2つもちます。$1$ から $30$ までの数の中に $4$ の倍数は7個あり、それぞれの $4$ の倍数は素因数 $2$ を少なくとも1つは追加でもつので、$30!$ が $2$ で割り切れる回数はもう7回追加されます。
同様に考えて、
$1$ から $30$ までの整数の中に $2$ の倍数は15個
$1$ から $30$ までの整数の中に $2^2$ の倍数は7個
$1$ から $30$ までの整数の中に $2^3$ の倍数は3個
$1$ から $30$ までの整数の中に $2^4$ の倍数は1個
あるので、$30!$ の素因数 $2$ の個数は、 $$15+7+3+1=26\,\text{(個)}$$ すなわち、$2$ で最大26回割り切れると分かります。

問題1の後半は、$10$ で割り切れる回数ですが、$10=2\times 5$ なので、$2$ と $5$ の両方で割り切れれば $10$ で割り切れることになります。すなわち、$2$ で割り切れる回数と $5$ で割り切れる回数の少ない方(等しい場合にはその回数)が $10$ で割り切れる回数になります。
$2$ で割り切れる回数は前半でやったので、その考え方をマネして、$5$ で割り切れる回数を求めようと思います。($1$ から $30$ までの積だと、素因数 $5$ の方が圧倒的に少ないので、$5$ で割り切れる回数が答えになります。)
$1$ から $30$ までの整数の中に $5$ の倍数は6個
$1$ から $30$ までの整数の中に $5^2$ の倍数は1個
あるので、$30!$ の素因数 $5$ の個数は、 $$6+1=7\,\text{(個)}$$ となり、$5$ で最大7回割り切れると分かります。すなわち、$30!$ は $10$ で最大7回割り切ることができます。

問題1と同様の考え方をする問題を私が初めて知ったのは、以下の問題であったと記憶しています:
問題2【1997年 日本数学オリンピック予選 第1問】
$1997!$ を十進法で表わすとき,末尾に何個の $0$ が並ぶか?

問題1と同じ考え方でできますが、今回は答えを1つの数式で表現することを目指してみようと思います。そのために、高校数学で登場する記号を2つ導入しようと思います。
1つ目は、和の記号です、 $$ \sum_{k=1}^{\infty}a_k=a_1+a_2+a_3+\cdots\cdots $$ 2つ目は、ガウス記号です。実数 $x$ に対し、$x$ 以下の整数で最大のものを $[x]$と表します。例えば、 $$ [5]=5,\quad [3.14]=3,\quad \left[\frac13\right]=0 $$ です。$1$ から $1997$ までの整数の中に $5^2=25$ の倍数は79個ありますが、これは $1997$ を $25$ で割ったときの商が $79$ であることに対応します。これをガウス記号を使って、 $$ \left[\frac{1997}{25}\right]=79 $$ と表すことができます。
以上の記号を使うと、問題2の解法を1つの式で表すことができます: $$ \sum_{k=1}^{\infty}\left[\frac{1997}{5^k}\right]=399+79+15+3+0+\cdots =496 $$ よって、答えは末尾に $0$ が496個並ぶと分かります。

以上、2つの問題を通して「10で何回割り切れるか?」の考え方を解説しました。
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